GARCONS dot COMMEのコラム集

コムデギャルソン(COMME des GARÇONS)の2015年春夏のテーマ『「薔薇と血」(Roses & Blood)』

コムデギャルソン(COMME des GARÇONS)は紅に燃ゆる

人間は古来より「紅」に心惹かれてきた。まずは目に飛び込んでくるのは,2015年春夏のテーマ「薔薇と血」という名称から連想される「赤」である。ただしすべて同じ赤ではない。深い赤,鮮やかな赤,くすんだ赤…様々な発色の「赤」が,歩くたびにそれぞれが同調して揺れている。まるで炎の中で揺れている「個性」が互いに認め合いながらも「自我」を主張しているようにも見える。モデルが袖を通すことでその「個性」に血が流れ,躍動的になっているとさえいえる。2015年春夏のテーマでコムデギャルソン(COMME des GARÇONS)が伝えたかったことは,もしかしたらその発色の多彩さよりも,その奥に見え隠れする「個と個」のぶつかり合いなのかもしれない。

テーマ「薔薇と血」に見えるデザイナーの意思

何より「赤」は人間の心理に大きく影響する。薔薇の「赤」と血の「赤」。ともに「はかなさ」を言葉の裏にみることができる。実際に2015年春夏でコムデギャルソン(COMME des GARÇONS)が主張したいテーマとしては,「薔薇と血」という,「赤」をモチーフに,その「赤」を通して,普遍的な真理を表現したかったのかもしれない。「血」を連想させるデザインは,白地に赤をほとばしらせたプリントが挙げられる。白いものを赤く染める,という発想はいささか反平和的であるようにも思える。その血はなぜ流れたのか。その理由を考えたとき,「薔薇」の棘が連想されたら,それこそがデザイナーの意図なのかもしれない。

テーマ「薔薇と血」から引かれる新たな人類のテーマとは

コムデギャルソン(COMME des GARÇONS)はいつも挑戦的である。デザインが本来示す,服飾の可能性の輪郭を毎年広げてくれる。時にはビビッドな赤で見るものを惹きつけては,またある時には柔らかい赤で昂った心を落ち着かせる。また炎のようなフォルムで人々を奮い立たせては,パッチワークの服の隙間からタイトなショートパンツを覗かせて人々の好奇心をくすぐらせる。デザインの多彩さは然ることながら,そこから自ずと発するテーマ「薔薇と血」は,単なるデザインにはとどまらない,いわば「政治的な」主張さえ感じさせてくれる。デザイナーにその意図はないかもしれない。しかし「何かあるかもしれない」と常に期待させてくれるその姿勢こそ,我々がコムデギャルソン(COMME des GARÇONS)から目を離せなくなる一番の理由である。

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